人は誰でも自分の物語をつくりたがる、というテーマの芝居を観た。人間の記憶という
ものは、“事実”に削除/追加を施してストーリーにしがち。大したことないものを「これは
大事だから代々引き継ぐように」と家族に繰り返し言い聞かせたり、何十年も前に誰かに
言われたことが今の自分に影響を与えている、としみじみ語ったり、学生時代の想い出は
楽しかったことばかりだった、辛いことの連続だった、と思いこんだり…。結局、自分の
人生に意味が欲しいから人は物語をこしらえる。
でも、真実はわからない…
ところで戯曲は、物語だ。演出が物語の流れを見逃すと「わからない!」とお叱りを受
ける。しかし実人生は、物語とは限らない。そこにフォーカスして物語に反旗を翻した前
衛演劇も生まれた。
それでもなお、物語は大事、という主張はいまだ健在。 どっちなんだ?
松本永実子